スコリアとは?多孔質で赤っぽい火山岩の特徴と見分け方を解説
スコリアとは
海岸や河原、あるいは火山に近い場所で、赤褐色や黒っぽい色をした、たくさんの穴が開いた石を見かけたことがあるかもしれません。このような石は「スコリア」と呼ばれ、火山活動によって形成される岩石の一種です。軽石と似ていますが、色や重さ、穴の様子に違いがあり、これらを見分けることも自然物観察の楽しみの一つです。
この図鑑記事では、スコリアの基本的な特徴から、どのようにして生まれるのか、そしてよく似た軽石など他の自然物とどう見分けるのかについて、詳しく解説していきます。
基本情報
- 正式名称/一般的な呼び名: スコリア(Scoria)
- 分類: 火山岩(火成岩)
- カテゴリ: 石
スコリアは、火山噴火によって地上に噴出したマグマが急に冷え固まる際に、マグマに含まれていたガスが抜けてできた多くの小さな穴(気泡痕)を持つ火山岩です。主に玄武岩質や安山岩質のマグマから生成されます。
詳細な特徴
形態
スコリアの最も特徴的な形態は、その多孔質構造です。石の内部や表面に、スポンジのようにたくさんの穴が開いています。これらの穴は通常、軽石の穴に比べてやや大きく、独立している傾向があります。形は不規則な塊状であることが多く、角ばったものも見られます。大きさは数ミリメートルから数センチメートル程度のものが一般的ですが、より大きな塊として見つかることもあります。
色・光沢
色は、含まれる鉄分などが酸化している場合が多く、赤褐色、褐色、黒褐色、あるいは黒っぽい色をしています。表面はザラザラしており、光沢はほとんどありません。乾燥しているとマットな質感に見えます。
硬さ・もろさ
スコリアは、多くの穴が開いているため、比較的もろい性質を持ちます。強く握ったりぶつけたりすると崩れることがあります。ただし、穴が少ない密な部分がある場合は、硬さを感じられることもあります。軽石と比較すると、密度が高いため、一般的に水に浮きにくく、水に入れると沈むものが多い傾向にあります。モース硬度は、構成する鉱物によりますが、全体の構造としてはもろいです。
産地・生息環境
スコリアは、過去または現在の火山活動があった場所の近くで見られます。特に、スコリア丘と呼ばれる小規模な火山の山体や、溶岩流の末端部、あるいは噴火の際に噴出された岩片(火山弾や火山礫)が集積した場所で多く見つかります。海岸に流れ着いたものや、古い噴火によるものが内陸部の河原や崖などで見られることもあります。
生成・形成過程
スコリアは、火山噴火時に、粘性が比較的低い(サラサラとした)マグマが急激に地表に噴出し、大気圧の低下によってマグマ中のガスが激しく発泡し、そのまま急冷されて固まる際に形成されます。この時、マグマ中のガスが泡となって抜けた跡が、石に残された穴となります。
軽石(パミス)も同じようにマグマ中のガスが発泡してできる多孔質の火山岩ですが、軽石は粘性が高く、ガスを多く含んだマグマから生成されるため、より細かい穴が無数に開き、密度が非常に低くなる結果、水に浮くほど軽くなります。一方、スコリアは比較的粘性が低いマグマから生成されるため、穴の数は軽石ほど多くなく、穴もやや大きく、石全体の密度が軽石より高くなる傾向があります。また、含まれる成分の違いや冷え固まる過程の酸化により、赤褐色や黒褐色を呈することが多いです。
スコリアの形成は、激しい火山活動の一端を示すものです。マグマが地上に噴出し、瞬時に冷え固まるというダイナミックなプロセスを経て生まれる自然物と言えるでしょう。
似ているものとの見分け方
スコリアとよく似ていて、見間違えやすいものとして、主に「軽石(パミス)」と、穴の少ない「他の火山岩(玄武岩など)」があります。見分けるための主なポイントは以下の通りです。
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軽石(パミス)との違い:
- 色: 軽石は白っぽい色や灰色をしていることが多いですが、スコリアは赤褐色や黒褐色をしていることが多いです。写真で見比べる際は、まず全体の色合いを確認してください。
- 比重: スコリアは水に入れると沈むものが多いのに対し、軽石は水に浮くものがほとんどです。これはスコリアの方が軽石よりも密度が高い(穴の割合が少ないか、穴が大きめ)ためです。実際に水に入れて試すのが最も分かりやすい見分け方の一つです。
- 穴の様子: 軽石の穴は非常に細かく、スポンジ状で均一な印象ですが、スコリアの穴は軽石より大きく、不規則な形をしており、独立した穴が多い傾向があります。石の表面をよく観察し、穴の大きさや密集度、形状を比較してみてください。
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他の火山岩(玄武岩など)との違い:
- 玄武岩などの火山岩は、スコリアのように目立つ穴がほとんどありません。あったとしても、数個の比較的大きな穴(杏仁構造と呼ばれることもあります)が見られる程度です。スコリアは全体が多孔質で、たくさんの穴が開いている点で明確に区別できます。
これらのポイントを組み合わせて観察することで、スコリアであるかどうかを判断しやすくなります。特に、色と水に浮くか沈むかという性質は、手軽に見分けられるポイントです。
関連知識
スコリアは、その多孔質であるという特徴から、様々な用途に利用されています。例えば、園芸用土として、水はけや通気性を良くするために用いられたり、建材として断熱材や軽量コンクリートの骨材として使われたりすることもあります。身近なところでスコリアが活用されている例を探してみるのも面白いかもしれません。
また、スコリアが集まってできた小規模な火山を「スコリア丘」と呼びます。単成火山の一部として見られることが多く、比較的なだらかな斜面を持ちます。日本国内にも、このようなスコリア丘は数多く存在します。スコリア丘を訪れる機会があれば、そこで見られる石がどのようなものか観察してみるのも良い経験となるでしょう。
スコリアは、地球内部のマグマ活動が作り出した、まさに「火山の石」です。その独特な形や色、そして軽石との違いを知ることで、火山がどのように活動し、どのような地形を作るのかといった地質学的な知識にも繋がっていきます。
まとめ
スコリアは、火山噴火によって急冷されたマグマからできる、多孔質で赤褐色や黒褐色をした火山岩です。軽石と似ていますが、色や水に沈む傾向がある点、そして穴の様子に違いがあります。火山地帯やその周辺でよく見られ、その形成過程は地球のダイナミックな活動を物語っています。ぜひ、皆さんの自然物コレクションにスコリアを加えて、その独特な特徴を観察してみてください。他の火山岩や軽石と見比べてみることで、それぞれの石が持つ個性がより一層理解できるようになるでしょう。