自然物コレクション図鑑

輝石(パイロキシン)とは?身近な岩石に含まれる造岩鉱物の特徴と見分け方を解説

Tags: 輝石, パイロキシン, 鉱物, 造岩鉱物, 岩石

輝石(パイロキシン)とは

身近な自然物である石、特に黒っぽい火山岩や深成岩を観察すると、様々な色の粒が集まっていることが分かります。その粒の一つとして、輝石(きせき、Pyroxene)は非常にポピュラーで重要な鉱物です。地球の地殻やマントルにも広く分布しており、多くの岩石の主成分の一つとなっています。コレクションの対象としては、単体の美しい結晶が採れる場所もありますが、多くは岩石中の構成鉱物として観察される機会が多いでしょう。この鉱物について深く知ることで、岩石の成り立ちや地球の活動の一端を理解する助けとなります。

基本情報

輝石は、化学組成や結晶構造によって様々な種類に分けられる鉱物のグループ名です。主にマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)などを含むケイ酸塩鉱物であり、その結晶構造はケイ酸四面体が鎖状に連なったイノケイ酸塩鉱物に分類されます。

詳細な特徴

形態

輝石は、岩石中では柱状や短冊状の結晶として見られることが多い鉱物です。しばしば黒色や暗緑色の小さな粒として、他の鉱物(例えば長石や橄欖石など)と一緒に結晶しています。単体の結晶としては、透明または半透明の六角柱状や八角柱状になることがありますが、比較的稀です。

色・光沢

輝石の色は、含まれる化学成分によって大きく異なります。鉄やマグネシウムが多いものは黒色や暗緑色、褐色を呈することが一般的です。カルシウムやナトリウム、アルミニウムを含む一部の輝石(例:ひすい輝石)は緑色や白色、紫色など多様な色を示します。光沢は一般的にガラス光沢を持ち、劈開面では特に明瞭に見られます。

硬さ・もろさ

輝石のモース硬度は5〜6程度です。これはナイフで傷つけることができるくらいの硬さにあたります。鉱物の最も特徴的な物理的性質の一つに「劈開(へきかい)」があります。これは、特定の結晶面方向に割れやすい性質のことです。輝石には2方向に明瞭な劈開があり、その2面は約90度(厳密には約87度と93度)の角度で交わります。この90度に近い劈開角が、似ている他の鉱物との重要な識別点となります。もろさとしては、劈開面に沿って比較的簡単に割れる性質があります。

産地・生息環境

輝石は非常に多くの岩石に含まれています。特に、マグマが固まってできた火成岩に普遍的に見られます。玄武岩や安山岩のような黒っぽい火山岩、斑れい岩や輝石岩のような深成岩の主要な構成鉱物です。また、高い圧力や温度を受けて変化した変成岩にも産出することがあります。

生成・形成過程

輝石は主にマグマが冷え固まる過程で結晶化します。マグマがゆっくり冷える深部では比較的大きな結晶に、地表近くで急激に冷える火山岩中では小さな結晶や斑晶(マグマ中で先に結晶化した比較的大きな結晶)として晶出します。また、既存の岩石が地球内部の高温高圧の条件にさらされる変成作用によっても生成されることがあります。地殻変動や火山活動、プレートテクトニクスと密接に関連して生成される鉱物と言えます。

似ているものとの見分け方

輝石と似ている鉱物として、よく挙げられるのが角閃石(かくせんせき、Amphibole)です。どちらも柱状や繊維状になりやすく、黒色や緑色を呈することが多いため、肉眼では区別が難しい場合があります。しかし、決定的な違いはその「劈開(へきかい)」の角度です。

結晶や粒をルーペなどで拡大し、光を反射させて劈開面がどのように割れているかを注意深く観察すると、この角度の違いを確認できることがあります。特に、割れた面の角を見るのが有効です。また、角閃石の方が繊維状になりやすい傾向がありますが、絶対的な基準ではありません。

もう一つ、黒っぽい造岩鉱物として橄欖石(かんらんせき、Olivine)がありますが、橄欖石はガラスのような粒状結晶で、輝石のような柱状や短冊状になりにくく、劈開も目立たない点が異なります。色も橄欖石は黄緑色を呈することが多いですが、黒っぽいものもあります。

関連知識

まとめ

輝石は、地球の岩石に広く含まれる非常に重要な鉱物グループです。黒っぽい粒として目立たない存在かもしれませんが、その結晶構造や化学組成の多様性は、マグマの性質や岩石の形成過程を解き明かす鍵となります。特に、角閃石との見分け方である約90度の劈開角は、ルーペ一つで楽しめる観察ポイントです。身近な岩石の中から輝石の小さな結晶を見つけ出し、その特徴を観察することで、岩石や鉱物に対する理解がさらに深まることでしょう。ぜひ、お手持ちのコレクションの中で輝石を探してみてください。