雲母片岩とは?キラキラ光る薄片状の石の特徴と見分け方を解説
雲母片岩(うんもへんがん)とは
雲母片岩(うんもへんがん、英: Schist、特にMica Schist)は、広域変成作用によってできた変成岩の一種です。この石の大きな特徴は、キラキラとした光沢を放つ雲母(うんも)の結晶が豊富に含まれ、それがほぼ平行に並んでいるために薄く剥がれやすい構造を持っていることです。
基本情報
- 名称: 雲母片岩(うんもへんがん)
- 分類: 変成岩 (Metamorphic rock)
- 含まれる主な鉱物: 雲母(白雲母、黒雲母など)、石英、長石など。変成度合いや元の岩石の種類によってはガーネット、緑泥石、紅簾石などを含むこともあります。
- カテゴリ: 石
雲母片岩という名前は、「片状(へんじょう)」に剥がれやすい性質を持つ「岩石」であり、特に「雲母」を多く含むことに由来しています。
詳細な特徴
雲母片岩は、その名の通り雲母を主体とする変成岩であり、いくつかの特徴的な性質を持っています。
形態
雲母片岩の最も顕著な特徴は、片理(へんり、Schistosity)と呼ばれる構造です。これは、構成鉱物(特に雲母のような平たい結晶を持つ鉱物)が圧力を受けて一方向に配列することで生じる、薄い板状に剥がれやすい性質のことです。雲母片岩は、この片理がよく発達しており、板状やレンズ状の層が積み重なったように見えます。結晶の大きさは様々ですが、多くの場合、雲母の結晶は肉眼でもはっきりと確認できるサイズです。
色・光沢
色は、含まれる雲母の種類や他の鉱物によって異なります。白雲母を多く含むと銀白色や灰色っぽくなり、黒雲母が多いと黒っぽい色合いになります。緑泥石を含めば緑色を帯びることもあります。雲母の結晶面は強い光沢を持っており、特に白雲母は真珠光沢や絹糸光沢を放ちます。光を当てると、この雲母の結晶面がキラキラと輝いて見えるのが雲母片岩の大きな魅力の一つです。
硬さ・もろさ
全体の硬さは、構成鉱物によって異なりますが、石英や長石を含むため比較的硬い部分もあります。しかし、雲母の層に沿っては非常にもろく、薄く剥がすことができます。ハンマーなどで叩くと、片理に沿って簡単に割れる性質があります。この剥がれやすさが、他の岩石との重要な見分け方の一つとなります。
産地・生息環境
雲母片岩は、地下深部で広範囲にわたる圧力と熱を受けた場所に分布します。これは広域変成作用と呼ばれる地質現象によって形成されるためです。日本国内では、四国地方の三波川帯や九州地方の秩父帯、中央構造線周辺など、かつての大陸衝突や造山運動に関連する地帯でよく見られます。川原や海岸、山間部の露頭などで採集されることがあります。
生成・形成過程
雲母片岩は、主に泥岩や砂岩、凝灰岩といった堆積岩や、安山岩や玄武岩などの火山岩が、プレートの沈み込みや大陸衝突などによって地下深部に運び込まれ、高い圧力と比較的高い温度にさらされることで形成されます。元の岩石に含まれていた粘土鉱物や長石などが、圧力と熱によって再結晶し、雲母などの新しい鉱物に変わります。このとき、岩石にかかる強い圧力によって、板状や柱状の鉱物結晶が圧力がかかっている面と垂直な方向に配列し直されます。この一方向に配列した構造が「片理」であり、雲母片岩の特徴的な性質を作り出します。変成作用の度合いが強いほど、鉱物の結晶は大きくなり、片理も明瞭になります。
似ているものとの見分け方
自然の中には、雲母片岩と似たように見える岩石がいくつか存在します。コレクションの際に正確に区別するためのポイントを解説します。
千枚岩(せんまいがん)
千枚岩(粘板岩がさらに変成したもの)も片理構造を持ち、薄く剥がれる性質があります。しかし、千枚岩に含まれる雲母などの鉱物結晶は非常に細かく、肉眼では個々の結晶をほとんど確認できません。表面は比較的滑らかで、光沢も雲母片岩ほど強くない場合が多いです。雲母片岩は、肉眼で確認できるサイズのキラキラ光る雲母の結晶が見える点が千枚岩との大きな違いです。
片麻岩(へんまがん)
片麻岩も変成岩であり、雲母を含むことも多いですが、片麻岩は「片麻構造(へんまこうぞう、Gneissosity)」と呼ばれる縞状の構造を持つことが特徴です。これは、明るい鉱物(石英や長石)と暗い鉱物(雲母や角閃石)が帯状に分離して配列することで生じます。雲母片岩は全体に雲母が卓越しており、このようなはっきりとした鉱物の帯状構造(縞模様)は見られないのが一般的です。また、片麻岩は雲母片岩よりも含まれる石英や長石の割合が多く、よりゴツゴツした印象の場合もあります。
見分け方のポイントは、肉眼で確認できるキラキラした雲母の結晶が見えるか、全体に薄片状に剥がれやすいか(片理が明瞭か)、そして縞状の模様(片麻構造)があるかないか、の3点に注目することです。
関連知識
雲母片岩は、地質学的に興味深いだけでなく、コレクションの対象としても魅力的な特徴を多く持っています。
- 名前の由来: 「片岩」という名前は、岩石が薄い板状(片状)に剥がれる性質に由来します。この性質は、岩石が地下深くで強い圧力にさらされた証拠であり、地球内部のダイナミックな動きを知る手がかりとなります。
- 含まれる鉱物のバリエーション: 雲母片岩には、雲母や石英の他に様々な鉱物が含まれることがあります。特に、比較的大きなざくろ石(ガーネット)の結晶を含む雲母片岩は「ざくろ石雲母片岩」と呼ばれ、コレクションの人気の対象となります。赤や黒のざくろ石の結晶がキラキラ光る雲母の中に散りばめられた様子は非常に美しいです。
- 利用: かつては石垣や壁材として利用されることもありましたが、片理に沿ってもろい性質があるため、強度が必要な主要な建築材として使われることは少ないです。庭石や観賞用として利用されることがあります。
- 採集・観察のヒント: 川原や海岸で雲母片岩を見つけたら、片理に沿ってそっと割ってみると、内部の綺麗な雲母の結晶面を見ることができます。また、石を水で濡らすと、雲母の光沢が一層増してキラキラと輝き、美しさを際立たせることができます。ただし、採集が許可されている場所であるか、周囲の安全には十分注意してください。
まとめ
雲母片岩は、キラキラとした雲母の光沢と薄片状に剥がれる片理構造が特徴的な変成岩です。その形成過程は地球内部の巨大な力によっており、含まれる鉱物によって多様な表情を見せます。似たような片理を持つ千枚岩や片麻岩との見分け方を知ることで、より正確に石の種類を判別することができます。身近な場所でも見つかる可能性がある雲母片岩をコレクションに加えて、その美しい輝きと地球の営みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。