自然物コレクション図鑑

石膏(ジプサム)とは?柔らかさと多様な結晶形を持つ鉱物の特徴と見分け方を解説

Tags: 石膏, ジプサム, 鉱物, 蒸発岩, セレン石

石膏(ジプサム)とは

私たちの身の回りにある建材や医療用品、さらには美術品としても利用されている石膏は、実は自然界に産出する鉱物です。様々な環境で見られ、結晶の形や色も多様であるため、自然物コレクションの対象としても非常に興味深い鉱物と言えるでしょう。この石膏について、その基本的な情報から詳しい特徴、そして他の似た鉱物との見分け方までを深掘りしてご紹介します。

基本情報

石膏は、化学的には硫酸カルシウムに水分子が二つ結合した水和物です。モース硬度2という非常に低い硬度を持つことが大きな特徴で、これは人間の爪(モース硬度約2.5)で容易に傷がつくほどの柔らかさを示します。

詳細な特徴

石膏はその形成される環境によって、様々な形態で産出します。

形態

石膏の結晶は多様な形をとります。一般的なものとしては、板状、柱状、針状、またはそれらが集合した塊状の形で見られます。特に有名な変種には以下のようなものがあります。

色・光沢

純粋な石膏は無色透明ですが、不純物を含むことで様々な色を呈します。白色、灰色、黄色、褐色、ピンク、あるいは赤っぽい色になることもあります。透明なセレン石はガラス光沢、繊維石膏は絹糸光沢、塊状の石膏やアラバスターは真珠光沢や鈍い光沢を持つのが一般的です。

硬さ・もろさ

前述の通り、モース硬度2と非常に柔らかい鉱物です。ナイフやコイン(モース硬度約3.5)はもちろん、爪でも傷をつけることができます。また、一方向に非常に完全な劈開(特定の面に沿って割れる性質)があり、薄く剥がれやすい性質を持っています。

産地・生息環境

石膏は、水に溶けた硫酸カルシウムが沈殿することで形成される「蒸発岩」の一種として、比較的乾燥した気候の地域や、海水や塩水が蒸発しやすい環境でよく見られます。具体的には、以下のような場所で産出します。

日本国内では、温泉地で見られたり、かつての鉱山跡のズリ(掘り出した捨石)の中から発見されたりすることがあります。

生成・形成過程

石膏の主な生成過程は、水に溶け込んだ硫酸カルシウム(CaSO₄)が、水の蒸発や温度・圧力の変化によって過飽和になり、結晶として析出することです。

海水や塩水が乾燥すると、まず溶解度の低い炭酸塩鉱物(例: 石灰岩の主成分である方解石)が沈殿し、次に石膏が沈殿します。さらに乾燥が進むと、岩塩(塩化ナトリウム)などの溶解度の高い鉱物が沈殿します。このように、石膏は地質学的に見て特定の環境下で形成される鉱物層の構成要素となります。

また、火山ガスに含まれる硫黄成分が水に溶け、周囲の岩石に含まれるカルシウムと反応して石膏が生成される場合もあります。温泉地帯の噴気孔周辺などで見られる石膏は、このようなプロセスを経て形成された可能性があります。

似ているものとの見分け方

石膏はその見た目が他の鉱物と紛らわしい場合がありますが、いくつかの簡単なテストで見分けることができます。

最も簡単な見分け方は、サンプルの端に爪や銅貨などで傷をつけてみることです。爪で容易に傷がつけば、モース硬度2〜2.5以下の可能性が高く、石膏である可能性が考えられます。

関連知識

まとめ

石膏(ジプサム)は、モース硬度2という柔らかさと、セレン石、繊維石膏、アラバスターといった多様な結晶形態を持つ興味深い鉱物です。温泉地や乾燥地帯の堆積岩層など、特定の地質環境で生成され、古くから人類の生活に深く関わってきました。見た目が似ている方解石や大理石などとは、硬さや酸への反応、結晶の形などを観察することで見分けることができます。身近な場所で見つかることもある石膏をコレクションに加えて、その多様な姿や性質を観察してみてはいかがでしょうか。