片麻岩とは?縞模様が美しい変成岩の特徴と見分け方を解説
片麻岩(へんまがん)とは?
片麻岩は、もともと別の種類の岩石が、地下深くで高い温度と圧力を受けて変成作用を受けた結果できた岩石(変成岩)の一つです。特に、鉱物が特定の方向に並んで縞模様(片麻構造)を形成しているのが特徴です。この縞模様は、変成作用の際に岩石が強い応力を受けたことで生まれます。身近な場所でも見られることがあり、その独特の模様からコレクションの対象としても人気があります。
片麻岩の基本情報
- 一般的な呼び名: 片麻岩(へんまがん)
- 分類: 変成岩
- 含まれるカテゴリ: 石
片麻岩は、元の岩石の種類によってさまざまな鉱物を含みますが、主に石英、長石、雲母(黒雲母や白雲母)、角閃石などが多く含まれます。これらの鉱物が平行に並ぶことで、明るい部分と暗い部分が交互に現れる縞模様が観察できます。
片麻岩の詳細な特徴
形態・色・光沢
片麻岩の最も顕著な特徴は、色の異なる鉱物が交互に並んだ「縞模様」(片麻構造)です。この縞模様は、数ミリメートルから数センチメートル程度の厚さを持つ層状に見られます。含まれる鉱物の種類によって、縞模様の色や幅は多様です。
- 色: 構成鉱物によって白、黒、ピンク、灰色などが組み合わさります。石英や長石が多い部分は明るい色、黒雲母や角閃石が多い部分は暗い色になります。
- 光沢: 含まれる雲母や角閃石が光を反射するため、キラキラとした光沢が見られることがあります。特に割れやすい「面」(片麻構造に平行な面)で光沢が目立ちます。
- 構造: 鉱物が特定の方向に並んでいるため、その方向に沿って割れやすい性質(片麻構造面での劈開に似た性質)を持つことがあります。
硬さ・もろさ
片麻岩の硬さは、主に含まれる鉱物によって異なります。一般的には、構成鉱物である石英(モース硬度7)、長石(モース硬度6〜6.5)、雲母(モース硬度2.5〜4)などの硬さに影響されます。岩石全体としては、比較的硬く、風化にも強い性質を持ちますが、片麻構造に沿って割れやすい場合もあります。
産地・生息環境
片麻岩は、地球の地殻変動が活発な地域や、過去に大きな地殻変動があった地域に広く分布しています。特に、造山帯の根っこの部分や、大陸の古い地層(安定陸塊)でよく見られます。日本国内でも、古い変成岩類が分布する地域(例えば、阿武隈山地、領家変成帯など)で見つけることができます。河原や海岸の石として見つかることもあります。
生成・形成過程
片麻岩は、高温(約400℃以上)と高圧の環境下で、もともと存在していた岩石(原岩)が「変成作用」を受けることによって形成されます。
- 原岩: 原岩となるのは、泥岩や砂岩などの堆積岩、あるいは花崗岩や玄武岩などの火成岩です。
- 地下深くへ: これらの岩石が地殻変動によって地下深くへと沈み込んだり、マグマの貫入によって熱せられたりします。
- 変成作用: 地下深くの高い温度と圧力のもとで、原岩を構成していた鉱物が再結晶したり、新しい鉱物が生成されたりします。この時、岩石にかかる一方向からの強い力(応力)によって、鉱物の粒が垂直方向に押しつぶされ、平行に並ぶように変形します。
- 片麻構造の形成: この鉱物の平行配列が「片麻構造」と呼ばれる縞模様を形成します。明るい鉱物(石英、長石)と暗い鉱物(黒雲母、角閃石)が、それぞれの集まりを作って互い違いに並ぶのが特徴です。
- 地上へ: 再び地殻変動や侵食によって地表に露出することで、私たちが見ることができるようになります。
片麻岩の縞模様は、地球内部で岩石が受けた壮大な力の歴史を物語っていると言えます。
似ているものとの見分け方
片麻岩の縞模様は特徴的ですが、他の岩石や構造と紛らわしいことがあります。見分けるためのポイントをいくつかご紹介します。
-
雲母片岩(うんもへんがん)との比較:
- 特徴: 雲母片岩も変成岩で、雲母が平行に並んでキラキラ光るのが特徴です。片麻岩と異なり、全体的に雲母の割合が多く、岩石全体が薄片状に剥がれやすい性質(片状構造)を持ちます。
- 見分け方: 片麻岩の縞模様は、明るい部分(主に石英・長石)と暗い部分(主に雲母・角閃石など)がはっきりとした層を作っているのに対し、雲母片岩は雲母が全体に散らばり、より細かい鱗片状に見える傾向があります。片麻岩は「縞」、雲母片岩は「全体的なキラキラ感と薄片状の剥がれやすさ」に注目すると良いでしょう。ただし、雲母片岩から片麻岩への移り変わりを示す岩石もあり、判別が難しい場合もあります。
-
堆積岩の縞模様(層理)との比較:
- 特徴: 砂岩や泥岩のような堆積岩にも、堆積する際にできた層状の模様(層理)が見られることがあります。
- 見分け方: 堆積岩の層理は、粒の大きさや色の違い、あるいは堆積構造(クロスラミナなど)によって形成されます。これに対し、片麻岩の縞模様は、鉱物が変形して平行に並んだ「片麻構造」です。片麻岩の縞模様は、鉱物の粒が引き伸ばされていたり、並び方がより「流れた」ような印象を受けることが多いです。また、含まれる鉱物の種類も、堆積岩とは異なる場合があります。
-
縞状鉄鉱層(しまじょうてっこうそう)との比較:
- 特徴: 古い時代の地層に見られることがあり、鉄鉱物を含む層とそうでない層が交互に縞状になった岩石です。
- 見分け方: 縞状鉄鉱層の縞模様は、鉄鉱物(赤鉄鉱など)による赤っぽい色や黒っぽい色と、シリカ(石英など)による灰色の層が明確に分かれています。構成鉱物が主に鉄鉱物とシリカである点、また生成環境が太古の海の環境である点が、多様な鉱物を含み、高温高圧下で形成される片麻岩と異なります。
関連知識
- 「片麻」の名前の由来: 「片麻(gneiss)」という言葉は、ドイツの鉱山で使われていた言葉に由来すると言われています。
- 建築材・装飾材としての利用: 片麻岩は、その美しい縞模様と耐久性から、古くから建物の壁材や舗装材、装飾材として利用されてきました。世界中の歴史的な建造物や現代建築でも見ることができます。
- 地質学的な重要性: 片麻岩は、地下深部での変成作用や地殻変動の情報を記録しているため、地質学の研究において非常に重要な岩石です。片麻岩を調べることで、その地域の過去の地質イベントやプレートテクトニクスの歴史などを知る手がかりが得られます。
- コレクションのヒント: 片麻岩の魅力は、その模様の多様性にあります。採集する際は、さまざまな色合いや縞模様のパターンを持つものを選んでみると、コレクションがより豊かなものになるでしょう。河原や海岸、工事現場のずり石などで見つかることがあります。
まとめ
片麻岩は、高温高圧下の変成作用によってできる、縞模様(片麻構造)が特徴的な変成岩です。含まれる鉱物や元の岩石によって多様な表情を見せ、雲母片岩や堆積岩の層理など、似たように見える他の岩石と区別するには、その構造や含まれる鉱物を注意深く観察することが重要です。地球のダイナミックな変動の歴史を刻んだ片麻岩は、自然物コレクションにおいても奥深い魅力を持つ石と言えるでしょう。