自然物コレクション図鑑

長石(フェルドスパー)とは?身近な造岩鉱物の多様な特徴と見分け方を解説

Tags: 長石, フェルドスパー, 鉱物, 石, 見分け方

長石(フェルドスパー)とはどのような自然物ですか?

私たちの身の回りにある多くの石、特に花崗岩のような岩石の主成分として、長石は非常に広く存在しています。地球の地殻の約6割を占めるとも言われる、最も一般的な鉱物グループの一つです。長石は、その多様な色や形、そして特定の方向への割れやすさ(へき開)といった特徴を持ち、様々な環境で生成されます。自然物コレクションにおいては、石の基本的な構成要素として、他の鉱物や岩石を理解するための基礎となる重要な存在です。

基本情報

長石は、カリウム、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、酸素から構成されるケイ酸塩鉱物です。その化学組成の違いによって、大きく分けて「カリ長石(正長石など)」と「斜長石」の二つのグループに分類されます。これらのグループ内にもさらに細かな種類が存在し、それぞれ微妙に異なる特徴を持っています。

詳細な特徴

形態

長石は、柱状や板状の結晶として見られることが多い鉱物です。特に、特定の方向(通常2方向)にほぼ直角に割れる性質(へき開)が顕著です。このへき開面は、光沢があり平滑な面として観察できます。大きさは、岩石を構成する小さな粒から、大きな結晶として産出されるものまで様々です。岩石中で他の鉱物と混ざり合っている場合は、結晶形が不明瞭な塊状で見られることもあります。

色・光沢

長石の色は非常に多様です。カリ長石の一種である正長石は、無色透明、白色、灰色、ピンク色、肉色(サーモンピンク)などが一般的です。一方、斜長石は、ナトリウムとカルシウムの比率によって種類が異なり、白色、灰色、黒色、緑色などが見られます。

光沢は、へき開面ではガラス光沢や真珠光沢を示すことが多いですが、それ以外の面ではガラス光沢や樹脂光沢を示すことがあります。斜長石の一部には、特定の方向から光を当てると虹色の輝きが見られる「ラブラドレッセンス」(ラブラドライト)や、真珠のような光沢が見られる「アノーソサイト」など、特殊な光沢を持つものもあります。条痕色(鉱物を素焼きの板でこすった際にできる粉の色)は、一般的に白色です。

硬さ・もろさ

モース硬度は6から6.5です。これは、一般的なナイフやガラスでは傷つきにくい程度の硬さですが、水晶(硬度7)よりは柔らかいです。へき開が発達しているため、特定の方向に沿って割れやすい性質を持っています。このへき開性は、長石を見分ける上での重要な手がかりとなります。

産地・生息環境

長石は、火成岩(マグマが固まってできた岩石)や変成岩(既存の岩石が熱や圧力で変化してできた岩石)の主要な構成鉱物です。特に、花崗岩、閃長岩、閃緑岩、玄武岩、安山岩など、様々な種類の岩石に含まれています。地殻のほぼあらゆる場所に存在し、山岳地帯や海岸、河原などで普通に見つけることができます。花崗岩が風化・分解した砂や土の中にも含まれています。

生成・形成過程

長石は主にマグマが冷え固まる過程で晶出します。マグマの成分や冷却速度によって、晶出する長石の種類や形が異なります。また、既存の岩石が高温高圧下で変成作用を受ける際にも再結晶化して生成されることがあります。

カリ長石と斜長石は、高温では互いに混じり合うことができますが、温度が下がると成分が分離し、ペグマタイトに見られるような特徴的な構造(パーサイトなど)を作ることもあります。斜長石は、ナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)の固溶体系列(連続的に組成が変化する)を形成しており、曹長石(アルバイト:Naに富む)から灰長石(アノーサイト:Caに富む)まで、様々な組成のものが存在します。

似ているものとの見分け方

長石は身近な鉱物ですが、他の鉱物と似ている場合があり、見分け方が重要になります。

カリ長石と斜長石の見分け方: 肉眼での識別は難しい場合が多いですが、大型の結晶や薄片を観察する際には区別できることがあります。斜長石の結晶面やへき開面には、「双晶縞(そうしょうじま)」と呼ばれる、光の反射によって平行な細い線状の模様が見られることがあります。これは斜長石に特徴的な「ポリシンセティック双晶」によるもので、カリ長石にはほとんど見られません。ルーペなどで表面を観察し、この縞模様の有無を確認することが、両者を見分ける手がかりの一つです。

関連知識

長石は、私たちの生活と深く関わっています。陶磁器やガラスの原料として古くから利用されており、特に長石を多く含むペグマタイトは陶磁器の釉薬や生地の重要な材料となります。また、研磨剤としても使用されます。

一部の長石は、その美しい色や光沢から宝石としても扱われます。例えば、カリ長石の一種である正長石グループの「ムーンストーン」は、シラー効果(真珠のような光沢)を持ち、斜長石グループの「サンストーン」は、内部のインクルージョンによるアベンチュレッセンス(キラキラとした輝き)、「ラブラドライト」は美しいラブラドレッセンスを示し、それぞれ人気があります。

長石が地殻の大部分を占めるという事実は、地球科学の観点から非常に重要です。岩石の種類を理解する上で、長石がどのような種類で、どのくらいの割合で含まれているかを知ることは、その岩石がどのような環境で、どのようにしてできたのかを知る手がかりとなります。

まとめ

長石は、私たちの周りの多くの石に含まれている、最も身近で重要な鉱物の一つです。その多様な色や形態、そして特徴的なへき開は、コレクションの対象としても、また他の石を理解するための入り口としても魅力的です。水晶や方解石など、似た鉱物との見分け方を学ぶことで、さらに石を見る目が養われます。ぜひ、身近な石の中に長石を探し、その多様な姿を観察してみてください。