自然物コレクション図鑑

大理石とは?美しい模様を持つ変成岩の特徴と見分け方を解説

Tags: 石, 岩石, 変成岩, 大理石, 地質

大理石(たいりせき)とは

海岸や川原で拾った石、あるいは建築物などで見かける美しい模様を持つ石の中に、大理石があるかもしれません。大理石は、その多様な色や模様、そして磨いた時の光沢から、古くから人々に愛されてきた変成岩です。ここでは、この魅力的な自然物である大理石について、その特徴や見分け方、そして関連する知識を詳しくご紹介します。

基本情報

大理石は、石灰岩や苦灰岩(ドロマイト)といった堆積岩が、地下深くで熱や圧力を受けて再結晶化した変成岩の一種です。主成分は方解石(カルサイト)であり、結晶が集合した構造をしています。

詳細な特徴

形態

大理石は、緻密な結晶が集まってできています。元の石灰岩が持っていた堆積構造(生物の殻の破片や泥の層など)は、変成作用によってほとんど消え去り、代わりに方解石の結晶粒が互いにしっかりと組み合った構造になります。割れ口は、方解石の結晶面がキラキラと光って見えることがあります。

色・光沢

純粋な方解石からできた大理石は、雪のように白い色をしています。しかし、元の石灰岩に含まれていた様々な不純物(粘土鉱物、酸化鉄、有機物など)によって、非常に多様な色合いや模様が生じます。赤、緑、黒、黄、灰色など、単色または複数の色が混じり合い、縞模様や網目状、あるいはまだらな模様を作り出します。研磨することで、これらの色や模様が鮮やかに浮かび上がり、美しいガラス光沢を放ちます。

硬さ・もろさ

大理石の主成分である方解石のモース硬度は3です。これは鉱物としては比較的柔らかい部類に入ります。ナイフの刃(硬度5〜5.5程度)で傷をつけることができ、爪(硬度2.5程度)でもわずかに傷つく場合があります。また、炭酸カルシウムであるため、酸(例えば薄い塩酸)を垂らすと二酸化炭素の泡を出して溶けるという特徴があります。

産地・生息環境(産出環境)

大理石は、石灰岩がマグマの貫入による熱変成作用を受けたり、あるいは広域変成作用による高い温度と圧力を受けたりした場所に産出します。特に、大規模な石灰岩層が分布し、地殻変動が活発な地域で見られます。有名な産地としては、イタリアのカララ地方(純白のカララマーブル)、ギリシャ、トルコ、中国などがあり、日本国内でも岐阜県や山口県などで産出します。河原で、変成岩地帯から流されてきた大理石の転石が見つかることもあります。

生成・形成過程

大理石は、堆積岩である石灰岩が、地下深くで数百度にも達する温度と数千気圧といった高い圧力を受けることで形成されます。この変成作用により、石灰岩を構成していた微細な方解石の粒や生物の殻の破片などが、より大きな方解石の結晶へと再結晶化します。この過程で、岩石の構造が変化し、緻密で硬い大理石が生まれます。元の石灰岩に含まれていた粘土や鉄分などが、再結晶化の過程で特定のパターンに集まることにより、大理石特有の美しい模様が形成されるのです。

似ているものとの見分け方

大理石とよく似ているのは、元の岩石である石灰岩です。見た目が似ている場合もありますが、以下の点に注目すると見分けることができます。

また、見た目が似ている白い石としてドロマイト(白雲石)がありますが、ドロマイトは炭酸カルシウムマグネシウムを主成分とし、塩酸への反応が石灰岩や大理石よりも鈍いという違いがあります。粉末にしないと泡を出さない場合が多いです。

関連知識

まとめ

大理石は、石灰岩が変成作用を受けて生まれた、多様な色と模様を持つ美しい変成岩です。その主成分は方解石であり、比較的柔らかく、酸に反応するという特徴があります。石灰岩との見分け方では、結晶の様子や組織の緻密さ、研磨時の光沢などが重要なポイントとなります。古くから建築や芸術に用いられてきた大理石は、身近な場所でもその美しさに触れる機会が多い石です。コレクションに加える際には、ぜひその生成過程や歴史にも思いを馳せてみてください。