安山岩とは?身近な火山岩の特徴と見分け方を解説
安山岩(アンデサイト)とは
安山岩は、私たちの身の回りの石として、比較的よく目にすることができる岩石の一つです。特に火山が多い日本では、安山岩でできた山や地形が多く存在します。一見すると地味な灰色の石に見えるかもしれませんが、その内部にはマグマが冷え固まる過程で生まれた様々な特徴が隠されています。この岩石を詳しく観察することで、地球の活動のダイナミズムや、岩石がどのようにしてできるのかといった深い知識を得ることができます。ここでは、安山岩の基本的な情報から、その詳しい特徴、似た石との見分け方、そして関連する知識までを掘り下げて解説します。
基本情報
- 名称: 安山岩(Andesite)
- 分類: 火成岩(マグマが冷え固まってできた岩石)のうち、火山岩(地表付近で急に冷え固まった岩石)に分類されます。化学組成(特に二酸化ケイ素 SiO₂ の含有量)によって分類され、安山岩は玄武岩と流紋岩の中間の組成を持ちます。
- カテゴリ: 石(岩石)
詳細な特徴
形態
安山岩の最も特徴的な構造は「斑状組織」と呼ばれるものです。これは、比較的小さな粒子の集まりである「石基(せっき)」の中に、比較的大きな粒子の「斑晶(はんしょう)」が点々と散りばめられている構造です。石基はマグマが急激に冷えて結晶になる時間がなかった部分で、ガラス質であったり、非常に細かい鉱物の結晶の集合であったりします。一方、斑晶はマグマが地下深くでゆっくり冷える際に先に結晶になった鉱物です。安山岩に見られる斑晶は、主に斜長石(白色や灰色)や、輝石、角閃石、カンラン石(黒っぽい色)などです。石基の色合いや斑晶の種類・量によって、安山岩は様々な見た目を示します。また、マグマに含まれていたガスが抜けた跡である「空隙(くうげき)」が見られることもあります。
色・光沢
安山岩の色は、一般的に灰色から暗灰色、または灰褐色など、中間の色合いを示すことが多いです。これは、含まれる鉱物の種類と割合によります。黒っぽい色の鉱物(輝石、角閃石、カンラン石など)の割合が増えると暗い色になり、白い色の鉱物(斜長石)の割合が多いと明るい灰色になります。石基は全体的にマットな質感ですが、斑晶として含まれる鉱物によっては、ガラスのような光沢(ガラス光沢)や、金属のような光沢(半金属光沢)を持つものもあります。例えば、黒っぽい輝石や角閃石の結晶は、光を反射してキラキラと光って見えることがあります。
硬さ・もろさ
安山岩は比較的硬い岩石です。モース硬度でいうと、構成鉱物によって異なりますが、全体としては5〜6程度と考えることができます。ハンマーで叩いても簡単には砕けませんが、大きな力や衝撃が加わると、特定の方向に沿って割れるのではなく、不規則に「割れ口」を示す傾向があります。これは、構成する鉱物の結晶の向きがバラバラであるためです。
産地・生息環境
安山岩は主に火山の周辺で見られます。特に、日本列島のように活発な火山活動が過去から現在にかけて続いている「環太平洋造山帯」のような地域に多く分布しています。これは、安山岩ができるマグマの性質が、プレートの沈み込み帯で発生する火山活動と関連が深いためです。河原や海岸、山の斜面など、様々な場所で安山岩の転石や露頭を目にすることができます。
生成・形成過程
安山岩は、地球の内部で発生したマグマが地表近くまで上昇し、比較的速い速度で冷え固まることによってできます。安山岩のマグマは、玄武岩のマグマよりも二酸化ケイ素(SiO₂)の含有量が多く、流紋岩のマグマよりも少ない、中間的な組成を持っています。
斑状組織は、マグマが二段階で冷え固まることで形成されます。まず、マグマが地下深くでゆっくりと冷える間に、特定の鉱物が大きな結晶(斑晶)として成長します。その後、マグマが地表付近に急上昇し、急激に温度が下がることで、残りのマグマ成分が小さな結晶(石基)として、あるいは結晶にならずにガラス質として固まります。この過程で、先にできた大きな斑晶が、後から固まった細かい石基の中に閉じ込められる形となり、安山岩特有の斑状組織が生まれます。
似ているものとの見分け方
安山岩は、同じ火山岩である玄武岩や流紋岩、また他の種類の岩石と見間違えやすいことがあります。見分けるための主なポイントは、色、含まれる斑晶の種類や量、そして全体的な質感です。
- 玄武岩(げんぶがん)との違い: 玄武岩は安山岩よりも二酸化ケイ素の含有量が少なく、一般的に真っ黒か非常に暗い灰色をしています。また、斑晶が少ないか、あったとしてもカンラン石(黄緑色の粒)や輝石(黒っぽい粒)が主な場合が多いです。安山岩は灰色から暗灰色で、白い斜長石の斑晶が目立つことが多い点で区別できます。
- 流紋岩(りゅうもんがん)との違い: 流紋岩は安山岩よりも二酸化ケイ素の含有量が多く、一般的に白っぽい色や淡い赤色をしています。ガラス質の部分が多く見られたり、マグマが流れた跡を示すような「流状構造」が見られることもあります。安山岩は流紋岩ほど明るい色はしておらず、流状構造はあまり見られません。
- 他の灰色っぽい岩石との違い: 堆積岩である泥岩(でいがん)や凝灰岩(ぎょうかいがん)も灰色っぽい色をしていますが、安山岩のような明瞭な斑状組織は持たないことが多いです。泥岩は非常に細かい粒子でできており、つるつるとした触感があります。凝灰岩は火山灰が固まってできた岩石で、火山灰の粒や小さな岩片などが含まれていることがあります。安山岩の斑状組織を確認することが、これらの岩石と区別する重要なポイントとなります。
観察する際は、岩石の割れ口や新鮮な面を探し、ルーペなどを使って斑晶の形、色、大きさ、種類を確認することが役立ちます。石基の色合いや質感も、見分けるための手がかりになります。
関連知識
- 名前の由来: 安山岩の名前は、南米のアンデス山脈に由来しています。アンデス山脈周辺で採取された岩石を研究した際に、その特徴的な性質が見出され、名付けられました。
- 日本列島と安山岩: 日本列島はプレートの沈み込み帯に位置しており、多くの活火山や休火山があります。このような環境では安山岩質のマグマが発生しやすいため、安山岩は日本列島を構成する岩石として非常に重要であり、様々な場所で目にすることができます。
- 利用: 安山岩は硬く風化しにくいため、古くから石材として利用されてきました。城の石垣や建物の基礎、墓石、道路の舗装材などに使われています。また、緻密なものは石器の材料として利用された例もあります。
- 採集・観察のヒント: 河原や海岸、火山の近くの登山道などで見つかる安山岩を観察する際は、転がっている石の様々な面を見てみましょう。割れている部分があれば、内部の斑晶や石基の様子をより詳しく観察できます。ルーペを使うと、細かい斑晶の種類や形、石基の様子がよくわかります。ただし、国立公園などでは岩石の採取が規制されている場合があるので、注意が必要です。
まとめ
安山岩は、灰色から暗灰色の色合いを持ち、石基の中に比較的大きな斑晶が散らばる「斑状組織」が特徴的な火山岩です。日本列島のような火山活動が活発な地域に多く見られ、マグマが地下と地表で二段階に冷え固まることで生成されます。似たような火山岩である玄武岩や流紋岩とは、色や斑晶の種類、質感などで見分けることができます。身近な場所で見つかる安山岩を手に取って観察することで、地球の内部で起こる壮大なプロセスや、私たちが住む大地の成り立ちについて考えるきっかけになるでしょう。様々な場所で見つかる安山岩をコレクションに加え、その多様な表情を比較してみるのも面白いかもしれません。