自然物コレクション図鑑

角閃石(アンフィボール)とは?身近な造岩鉱物の多様な特徴と見分け方を解説

Tags: 角閃石, アンフィボール, 鉱物, 造岩鉱物, 石

角閃石(アンフィボール)とは

私たちが普段目にする多くの岩石には、いくつかの種類の鉱物が集まってできています。そのような岩石を構成する主要な鉱物は「造岩鉱物」と呼ばれており、角閃石(かくせんせき、Amphibole)もその一つです。角閃石は非常に多様な種類があり、火成岩や変成岩など、さまざまな岩石の中に含まれています。黒っぽい色合いのものが多く、他の造岩鉱物である長石や石英、雲母などと共に観察されることがよくあります。

基本情報

角閃石は、その化学組成や結晶構造の違いによって非常に多くの種類に分けられる鉱物グループの総称です。普通角閃石(かくせんせき)と呼ばれる緑閃石(りょくせんせき)-鉄閃石(てつせんせき)系列のものが最も一般的によく見られます。

詳細な特徴

角閃石は、その含まれる岩石や種類によって様々な姿を見せますが、いくつかの共通する特徴があります。

似ているものとの見分け方

角閃石とよく似ていて、特に区別が難しいのが同じく造岩鉱物である「輝石(きせき、Pyroxene)」です。輝石もまた多様な種類を持つ鉱物グループですが、肉眼での観察やルーペを使った簡単な観察で区別できるポイントがあります。

最も重要な違いは「劈開の角度」です。 * 角閃石: 約56度と124度の2方向の劈開。 * 輝石: 約90度(直交に近い)の2方向の劈開。

柱状の結晶の断面を観察すると、角閃石はダイヤモンド形や六角形に近い形に見えやすいのに対し、輝石は四角形に近い形に見えやすいという違いがあります。これはそれぞれの結晶構造(角閃石は二重鎖、輝石は単鎖のケイ酸塩四面体構造)を反映しています。

岩石に含まれる小さな結晶で劈開の角度を正確に測るのは難しいですが、ルーペなどで結晶面に光を当ててみると、劈開面に沿って光が反射する様子が観察できます。この反射する面の方向や、結晶が割れた面の状態をよく観察することで、角閃石か輝石かを判断する手がかりになります。一般的に、細長い柱状の結晶になりやすいのは角閃石の方である傾向も見られますが、これはあくまで傾向であり、決定的な特徴ではありません。

関連知識

「アンフィボール(Amphibole)」という名称は、ギリシャ語の「両義的な、曖昧な」を意味する言葉に由来すると言われています。これは、角閃石グループの鉱物が非常に多様な化学組成や外見を持つことから名付けられました。

角閃石グループの一部、特にアクチノライトやトレモライトといった特定の種類の繊維状のものは、かつてアスベスト(石綿)として利用されていました。アスベストは耐久性や耐熱性に優れるため建材などに広く使われましたが、飛散した繊維を吸い込むと健康被害を引き起こすことが判明し、現在では使用が厳しく制限されています。ただし、一般的に岩石に含まれる角閃石は繊維状ではない形態で存在することが多く、問題となるアスベストとは区別されます。

岩石採集や観察の際は、ルーペを持参し、結晶の形や劈開面に注意深く光を当てて観察することが、角閃石を識別するための重要なヒントになります。新鮮な面を見るために、無理のない範囲で岩石を割ってみることも有効です。

まとめ

角閃石は、私たちの身近な岩石の中に広く含まれている重要な造岩鉱物です。黒っぽい地味な見た目のものが多いですが、その多様な種類、特徴的な劈開、そして様々な岩石の成り立ちを読み解く上での鍵となる存在です。特に輝石との見分け方を知ることは、岩石観察のスキルを向上させる上で役立ちます。ぜひ、お手持ちの岩石コレクションの中に角閃石が含まれていないか、注意深く観察してみてください。